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食事と祈り

 



 亡き人を偲ぶ心と、この世を精一杯生きている者が心切実に念じる祈願と、生身の身体を維持する食事とが折り重なったものがあります。それは「陰膳(かげぜん)と霊供膳(りょうぐぜん)」です。


 陰膳は、会いたくても会えない大切な人を想って用意する小さな食事のセットで、古くからおこなわれてきた仏教の風習です。離れたところに暮らす家族の安全や、故人が無事にあの世へ行けるよう祈願するのが目的です。


 かつて、電話やインターネットなどのない昔は、離れた場所にいる人と連絡を取り合うのは、とても難しいものでした。そのため、大切な人が遠くにいるときに飢えを感じたり、不運な事態に遭ったりしないよう、無事を願って食膳を準備する、という意味が陰膳に込められていたそうです。


 また、戦争中は、戦いの場に赴いた家族の安全を願って、陰膳を準備しました。

 一方で、お通夜や葬儀の日に用意してあの世へ旅立った故人の無事を願う霊供膳があります。故人は旅の末にあの世に行き着くと考えられてきました。残された家族は「故人が何事もなくあの世へ到着するように」と祈りを込めて、道中、食に困ることのないように霊供膳を支度します。


 現代は遠い場所の人とも簡単に連絡を取り合えるため、陰膳は衰退し、仏事の霊供膳しか残っていませんが、人を思う大切さを今に伝えるものなのかもしれません。


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